民泊とは?空き家を活用した民泊ビジネスのトラブルや法的規制

シェアリングエコノミーという言葉が注目を集めています。主に個人が保有する遊休資産を、インターネットやソーシャルメディアを利用して第三者に貸し出す仲介サービスを意味します。

貸主には遊休資産の活用による収入、借主には所有することなく一時的な利用ができることがメリットになります。

インターネットを活用する新しいビジネスとして、グローバルに市場が拡大しています。

自動車であれば、個人のドライバーと移動ニーズのあるユーザーをマッチングし、ライドシェアを行うUber(ウーバー)、自宅の空き駐車場を貸しだすakippa(あきっぱ)、宿泊の分野では民泊の仲介サービスを行うAirbnb(エアービーアンドビー)が有名です。

広義の民泊は一般の民家に旅行者が宿泊することを指しますが、昨今では空き家や空き部屋などの遊休不動産を、有償で宿泊者へ貸し出す意味に使われています。

民泊は、訪日外国人観光客の増加による宿泊施設不足の解消や、イベントや災害時の宿泊場所提供などへの活用が期待されています。

ただし民泊は新しいビジネスのため、法的な整備が遅れ、ホテルなど既存の宿泊サービスを行う業界との軋轢、無秩序な民泊投資による不動産賃貸価格の上昇、民泊施設の宿泊者による近隣トラブルなど乗り越えなければならない課題も浮上しています。

空き家や空き部屋を民泊で活用する際の法的規制や、注意点について解説します。

急伸する民泊ビジネス

きっかけはAirbnb

2008年のAirbnbの設立、2015年に国内でのサービスが開始されたことをきっかけとして、日本で民泊が注目され始めました。

Airbnbは空き部屋や不動産等を所有する個人・法人(ホスト)と、旅行などの宿泊先として借りたいユーザー(ゲスト)を、インターネット上でマッチングするサービスです。

総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

ホストは無料で物件登録ができ、宿泊料金は自由に設定ができます。宿泊に付帯する清掃料金、宿泊する人数の追加料金も設定が可能です。

ホストはゲストへの情報提供として基本データや写真などの物件情報、貸出可能日や宿泊条件等を登録します。

ゲストは気に入った物件があれば、ホストに予約をリクエストし、ホストの承認後予約となります(承認なしで予約を確定する設定もホスト側で可能)。

ゲストの料金の支払いはAirbnbを通して行われ、手数料を引かれたうえでホストが受け取ります。

見ず知らずの人とのマッチングでは、お互いの信頼度やセキュリティが重要となります。

ホスト、ゲストとも匿名ではサービスを利用できず、身分証明書などから本人確認を行う「ID認証」が必要になります。

ユーザー間の信頼性を高めるために、ホストとゲストで双方向の評価を行う「レビュー評価制度」、Facebook等の外部のソーシャルメディアの認証情報を利用する「SNSコネクト」、ゲストに起因する損害を補償する「ホスト保証制度」等の機能や制度が導入されています。

物件数も急拡大しており、191か国以上の34,000を超える都市で100万以上の宿が提供されています。国内での登録件数は東京、大阪、京都などを中心に35,000件以上(2016年現在)が登録されています。(観光経済新聞より

民泊ビジネスの拡大が予想される背景

政府は『観光先進国』への新たな国づくりに向けて、2020年の東京オリンピック開催にあわせて訪日外国人旅行者を4000万人へ増やす計画です。

観光庁を中心にビジット・ジャパン事業が実施され、2015年には1974万人まで急増しています。

※出典:観光庁HP

※出典:観光庁HP

外国人延べ宿泊者数は6637万人(2016年 観光庁統計)で前年比48.1%増、全国の宿泊施設の稼働率も軒並み上昇しており、全国で60.5%、東京都と大阪府では80%を超えています。(国土交通省観光庁より

宿泊施設の高い稼働率は、宿泊施設不足が深刻化し、宿泊料の高騰や宿泊予約の競争激化などの影響が出ていることを示しています。

(2016年3月の宿泊施設タイプ別客室稼働率)

全体 旅館 リゾートホテル ビジネスホテル シティ
ホテル
簡易宿所
全国 60.5% 37.8% 57.3% 75.1% 79.9% 27.3%
東京都 82.2% 65.8% 77.5% 86.4% 84.5% 54.6%
大阪府 87.8% 50.0% 93.1% 90.5% 89.8% 66.4%
京都府 73.7% 48.8% 60.7% 87.4% 89.6% 36.8%
愛知県 74.4% 38.2% 53.7% 82.3% 84.3% 44.6%

国土交通省では宿泊施設目的の建物の容積率の緩和、比較的空室のある地方への誘客などを進める一方で、不足する宿泊施設の受け皿として、民泊の活用が検討されています。

また、訪日外国人旅行者の旅行スタイルも民泊を後押しているともいえます。決して安くない日本の宿泊費に対して、民泊の利用料は安いのが魅力です。

低予算で旅を楽しむ若年層だけでなく、移動はLCC(格安航空会社)を使い、宿泊にもコストをかけない分、旅行先での体験などにお金をかける旅のスタイルは外国人に多い傾向です。

また宿泊自体でも日本での文化体験や、地元の人との交流をするためと考える旅行者も多く、サービスは整っていますが画一的なホテルよりも、あえて民泊で一般の民家や農家を選び宿泊する旅行者もいます。

経済効果への期待

Airbnbのレポートによれば、2015年にAirbnbコミュニティ(利用するホストとゲスト)が創出した利益は2,363億円であり、飲食や買い物などの経済効果は44億ドル(5,207億円)と推計されています。

日本のホストの標準的な年間収入額は122万2,400円で、部屋当たり年間101泊、トータルでは138万3,000人以上がAirbnbを利用して宿泊したとされています。

一方で、「民泊は総額で10兆円以上の経済効果を生み出す」という独自の試算結果が新経済連盟から報告されています。

内訳は、約200万戸の物件数、外国人の受け入れ人数が約2500万人という仮定で、民泊を利用した旅行者の消費が約3.8兆円、民泊施設のオーナーの設備投資が約1兆円、外国人旅行者のインバウンド関連消費が約7.5兆円となっています。

新経済連盟試算(Travelニュース)より

数字に大きな開きがありますが、どちらにしても今までにない新サービスで、需要の高い新市場であることから、経済的な効果も十分に期待できます。

海外の報告では、交通の便の悪い景勝地やSNSなどで話題になった場所などで、近隣にホテルなどの宿泊施設が無い地域でも、Airbnbの宿泊施設があればエリア全体に経済的な効果がでるという報告もあります。

また、建物や部屋の清掃サービス、鍵の受渡しや利用前の説明などのレセプション業務、Airbnbなどの仲介サービスへの登録や予約管理など、遊休不動産を所有するホストに替わって業務代行する周辺ビジネスなどの需要も伸びていく可能性があります。

民泊が抱える問題点

民泊はホストとゲストの信頼によって成り立つ前提ですが、信頼の前提となる常識やマナー、価値観は国や地域、人種によっても異なります。

ゲストに外国人旅行者が多い民泊では、ホストやゲストが予期しないトラブルに巻き込まれる場合もあります。

また外国人に慣れていない日本社会では、「ヨソモノ」に対するアレルギーを持つ人もまだまだ多く、民泊への理解が得られないことも予想できます。

さらに重要な問題点は、民泊における法整備が十分でないことです。宿泊施設を営業するには、旅館業法など複数の法律に定められた条件を満たした許可が必要で、Airbnbに登録されている物件の半数以上が、現行法では許可が無い「違法」または「法的にグレー」ともいわれています。

政府の規制緩和やルール作りが進まなければ、宿泊施設不足の解決に民泊は活用できません。急ピッチで法整備が進んでいますが、従来の宿泊施設との兼ね合い、施設の衛生面や治安面なども配慮して一定の規制が残るはずです。

ゲストによるトラブル

外国人がゲストになることが多い民泊では、文化や生活習慣の違いによりゲストに自覚が無くても、周辺住民とのトラブルとなるケースがあり、既に問題になっています。

深夜に友人を呼んでパーティーを開き大声やダンスを踊る、集合住宅の共用部に大勢が集まり大声で会話する、利用者のキャリーバックの走行音、ゴミの分別や捨て方のマナー違反など近隣から苦情が出るケースが多発しています。

直接苦情を伝えに来た近隣住民と口論や喧嘩にまで発展し、警察沙汰になるケースもあります。

ホストが巻き込まれるトラブル

土足禁止や禁煙、チェックイン・アウト時刻の厳守など細かいルールを守らないゲストは多くいます。さらに、風呂、キッチン、造作などの設備の破壊や改造が行われることも考えられます。

Airbnbではホスト保証や傷害保険なども準備されていますが、Airbnbがゲストのマナーを保証してくれるわけではありません。

ゲストによる失火、漏水、室内での事故や事件など考えうるリスクは、すべて起こりうる可能性があります。

また、ゲストが善良な人間であるとは限りません。AirbnbではID確認を行って、ゲストの身分確認をしていますが、反社会的勢力や犯罪者に転貸され非合法な活動に使用されることも考えられます。

宿泊施設の経営者であれば宿泊者のトラブルなど日常茶飯事で、解決のノウハウや方法も多く持っていますが、客商売に慣れないホストには負担が大きすぎます。

事件などになれば、施設の所有者であるホストが管理責任を問われる可能性もあります。

様々な法律に違反するリスク

宿泊施設の要件や規定を定めた旅館業法については後述しますが、現行の法制度の下では旅館業法以外にも多くの法律をクリアする必要があります。

建築基準法では、市街化地域内の建物ごとに用途区分が決められ登記されています。居住用の建物の場合は「一戸建て住宅」「共同住宅(マンション)」などになっていますが、宿泊施設として営業する場合「簡易宿所」などに変更する必要があります。

市街化地域内の中でも、第一種低層居住専用地域では簡易宿所の建築はできませんので、用途変更せず民泊を始めると建築基準法違反となります。※ただし民泊新法による例外あり

また消防法の規定で「建物の半分未満で50㎡以下」を民泊として貸し出す場合を除いて、民泊用の消防施設の設置が義務付けられています。

具体的には、消火器(延べ面積が150㎡以上の場合)、自動火災報知設備、誘導灯、カーテン・じゅうたんなどの防炎化が必要になります。

自動火災報知設備は、住居用の火災検知器とは異なり発信機・受信機を備え、音響設備や表示灯などと連動する設備です。

延べ面積500㎡以上のマンションであればホテルと同じ規制なので、追加設備は誘導灯程度で済みますが、面積によっては自動火災報知設備などの新規設置が必要になります。

詳細は各自治体の消防署で規定されているので、確認が必要です。ゲストの安全を確保するという意味では、消防法の規制は妥当性があるといえますが、消防用設備の資金は民泊を始める際の壁になっていることも事実です。

現行の旅館業法による民泊の扱い

現行の旅館業法では、民泊は定義されていません。一方で旅館業法では「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」が旅館業と定義されています。

「宿泊」は「寝具を使用して施設を利用する事」なので、宿泊者が寝具を持ち込む場合でも宿泊に該当します。

「営業」は「社会性を持って継続反復されているもの」ですので、インターネットなどで不特定多数の宿泊者の募集を行っていることは営業にあたります。

宿泊料を徴収しているかどうかも旅館業とみなされるかの境目になりますが、通常は「部屋と寝具の使用料」が宿泊料になります。

たとえ休憩料、寝具レンタル料、光熱費、清掃費用などの名目であっても、実質的に部屋と寝具の使用料であれば、宿泊料とみなされ、旅館業の許可が必要になります。

民泊は宿泊設備が個人宅や空き部屋などですが、実質は旅館業となり旅館業法の規制の対象となります。

旅館業の4つの分類

旅館業法では、宿泊設備や営業の形態により4つに分けられ、旅館業を始める場合はいずれかでの許可が必要になります。

ホテル営業 洋式の構造及び設備を主とする施設。客室は10室以上、1客室の床面積は9㎡以上。条例で、レストランや食堂を併設することが義務付けられている場合が多い。
旅館営業 和式の客室構造を主体とする宿泊施設。客室は5室以上、1客室の床面積は7㎡以上
簡易宿所営業 宿泊する施設を多人数で共有する構造及び設備を主とする施設
下宿営業 施設を設け、1ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を儲けて人を宿泊させる営業

上記以外にも、部屋の採光、部屋の施錠、収容人数に合わせた共有トイレの数やフロントの要否など様々な規定が旅館業法施行令で決まられています。

さらに営業の許可は自治体で行うため、条例などで細かな規定が定められている場合もあります。宿泊料を徴収する民泊を現行法に合わせて始める時は、カプセルホテルなどと同じ簡易宿所営業の許可を取るケースが多くなります。

民泊と民宿の違い

民宿は農家、林業や漁業の従事者が、副業として自宅の一部をスキー客や海水浴、釣り客などに貸したのが始まりといわれています。

民家の空き部屋を貸し出す意味では民泊と似ていますが、現在では宿泊専用の建物で経営しているケースがほとんどで、設備面でも旅館やホテルとの境目が無くなっています。

民宿は常態的に宿泊者に部屋と寝具を提供しているため、旅館業法の分類で簡易宿所営業の許可を取得して営業しているケースがほとんどです。

また、農山漁村での作業体験をメインとする「農家民宿」の場合は、旅館業法の規制緩和が行われています。

1994年に農山漁村と都市の交流を目的とした「農山漁村余暇法」が施行され、2003年の旅館業法の規制緩和で、農林漁業者が営む「農林漁業体験民宿」は簡易宿所営業の規定(客室延床面積が33㎡以上)に満たなくても許可され、建築基準法、消防法、送迎などの道路運送法でも緩和措置が取られています。

農林漁業体験サービスと宿泊をセットで提供する場合は、広告宣伝を行う場合にも旅行業の許可も不要になっています。

また、現在では農林漁業者以外の個人や団体でも、「農林水産漁業体験民宿業」として登録が可能になっています。

規制緩和は進んでいますが、許可や登録は必要で、条例等によるルールや規則は異なりますので、都道府県や市町村などの窓口に相談することが大切です。

そのほかの宿泊施設の解釈

民泊と同じ様な発想で、すでに実績のあるサービスとしては部屋を短期間賃貸借するウィークリーマンションやマンスリーマンションがあります。

長期宿泊すると割高になるホテルと、敷金や礼金などが面倒な賃貸住宅の中間的なサービスとして、1週間や1カ月単位、業者によっては1日単位で部屋を借りることができるものもあります。

短期賃貸マンションともいわれますが、法律的には旅館業と不動産業のどちらかの解釈で運営されています。

民泊においても「賃貸契約を締結しているから」と短い期間で滞在者を受け入れても、利用実態が宿泊施設と同等であれば、旅館業と判断される可能性は高くなります。

もう一点は「居住者が生活の本拠となっている」ことが重要で、ウィークリーマンションと同様に、一泊単位で借りる事ができる「貸し別荘」は旅館業、シェアハウスやホームステイは「生活の本拠」と認められるので旅館業に該当しないといわれています。

参考までに、ネットカフェや漫画喫茶、一部のサウナなどについては、椅子やソファーなどで「朝まで居眠り」という解釈です。毛布の貸し出しなどはありますが、ベッドや布団など寝具の提供は無いのでこちらも旅館業に該当しないと言われています。

厚生労働省「旅行業法について」

民泊解禁に向けての動き

違法の自覚が有る無しに関わらず、多くのホストによって旅館業の許可を取らず民泊が行われているのが実態です。

悪質な物件やホストを見せしめ的に摘発するなど、取り締まりも厳しくなってきていますが、数万はあるホストの営業状況を調査し摘発するのは実際には不可能です。

「お目こぼし」をしているわけではありませんが、既存の法律に当てはまらないからと、なし崩し的に民泊が解禁状態になってしまうと様々な問題を引き起こします。

また、東京オリンピックの成功と観光立国を目指す政府は、宿泊施設不足の解消だけでなく、旅行による消費拡大、地域振興、空き家活用など民泊の経済効果にも期待しています。

このような背景の中、政府は旅館業法では適合させにくい民泊に、新しく一定の枠組みを作り解禁に向けた動きを行っています。

国家戦略特区での民泊条例

特定の地域に限定して、既存の法律による規制を緩めて地域振興や国際競争力の向上を図る経済特区を「国家戦略特別区域」(国家戦略特区)といいます。

国家戦略特区に指定されている地域内で、各自治体が民泊に関する条例(民泊条例)を定めることで旅館業法の規制を緩めることができます。

このような国家戦略特区での民泊を「特区民泊」といいます。この民泊条例の正式名称は「国家戦略特別区外国人滞在施設経営事業に関する条例」ですが、外国人が滞在できる設備を備えることが条件で、日本人でも利用が可能です。

内閣府地方創生推進事務局 特区民泊について

2016年1月に東京都大田区、同4月に大阪府で民泊条例が施行されましたが、特区民泊の事業者として認定されたのは大田区で23施設、大阪府で4施設とほとんど活用されていません。(Airstarより

理由は「滞在期間を6泊7日以上」の条件があり利用者が限られたためですが、2016年10月に「2泊3日以上」に改められています。

特区民泊は旅館業法の条件よりは緩和されていますが、滞在期間以外にも以下のような条件が決められています。

・国家戦略特区内の施設であること
・ホストとゲストで賃貸借契約(定期借家契約)を締結すること
・施設条件は一部屋当たり25㎡以上、出入口や窓の施錠、冷暖房設備、浴室・キッチン・トイレなど
・外国語の案内があること
・事業の一部が旅館業に該当すること

条例で詳細が決められるので、各自治体により内容も異なります。大田区の場合は旅館業法の規制は緩和しますが、建築基準法による用途地域規制は従来通りの適用となります。

特区民泊は滞在日数の制限など全面解禁では無く、既存の旅館業法を遵守して営業しているホテル業や旅館業に遠慮した形となっています。

それでも旅館業の許可よりは簡略化されており、次項で説明する「民泊新法」に向けたテストケースとも捉える事ができます。

民泊新法(住宅宿泊事業者法)の動向

旅館業ではなく、新しいサービスとして民泊営業を法律として規定するのが民泊新法(住宅宿泊事業者法)です。

2017年の国会提出を目指している法律のため、現状で検討されている内容を説明しますが、名称、内容ともに変更される可能性や、法律そのものが成立しない場合もあります。※その後の法案成立により2018年6月に施行予定

【民泊新法の概要】
・民泊を「ホームステイ型(家主居住型) 」と「投資型(家主不在型)」の2分類に分け、それぞれで条件を規定する。
・旅館業法での「許可」、特区民泊での「認定」ではなく、ホームステイ型はホストが事前に「届出」するだけになる。
・投資型も住居の所有者は「届出」のみになりますが、民泊施設管理者(所有者が兼務することも可能)の連絡先を表示することが義務化されます。民泊施設管理者は自治体などへの登録が必要となり、施設管理業務の報告などが義務化されます。
・特区民泊の様に宿泊日数制限はなく、1泊からでも受け入れが可能
・住宅専用地域でも民泊が可能(但し、地域の実情に合わせ条例で禁止する事ができる)
・1施設(部屋)当たりの年間提供日数は180日以下

届出制になり参入のハードルが低くなるだけでなく、最低宿泊日数の制限や建築基準法上の住居でも一部合法となるなど、解禁に近い内容です。

ポイントとなるのが、年間提供日数の180日制限です。1泊2日で2日とみなされると、実質90日の営業となり投資型での収支は厳しくなります。

国土交通省 実例にみる「家主不在型の賃貸マンションを民泊利用した場合の収支状況」

当然のことですがホテル・旅館業界からの要望という形で、180日規制が取り入れられています。旅館業法との兼ね合いからも、投資型には一定の規制をかけざるを得ない政府の都合もあります。

また、投資型を無制限にしてしまうと、投資家によって不動産物件が買い占められ利益の出しやすい民泊へ転用されることで、良質な居住用物件の供給が減り、家賃相場が上昇する恐れもあります。

民泊解禁により、物件の流通増への期待や民泊ビジネスへの参入を目論む不動産業界からは規制撤廃の声も上がっていますが、同様な規制はニューヨーク市やイギリスなどでも行われており、180日以下をベースに調整されると予想されます。

また民泊新法では、Airbnbなどの仲介事業者への規制も検討されており、取引条件の説明の他、無届け施設、年間提供日数をオーバーした物件の取り扱いを禁止する予定です。

民泊新法では消防法の規制など緩和内容が未定な部分もありますが、ホームステイ型は解禁、投資型ではホストが利益を上げにくくすることで、一定の規制を残しています。

ホストが同居しているホームステイ型では近隣トラブルなどは起こりにくく、ホストとゲストのコミュニケーションなど民泊本来のメリットがある形態です。

一方で投資型は投機的な側面が強く、新たに不動産を所有、賃貸借して始めるケースも多くシェアリングエコノミーの主旨とは異なったビジネスになっています。

民泊本来の意義に則った民泊新法ですが、空き家や空き部屋の民泊活用で収益を得たいと思っていた人には、がっかりするような内容かもしれません。

民泊新法はこれからも議論が続き、最終的にどう決着するかはわかりませんが、法案の今後の動向に注目していく必要があります。

民泊で合法的に空き家、空き部屋を活用するには

ここまでを纏めると、合法的に空き家で民泊を行うには3つの方法があります。

①旅館業法に則り、簡易宿所営業の許可を取得する
②国家戦略特区での民泊(特区民泊)で認定を受ける
③民泊新法の施行を待って、届出を行う

どの方法でも、民泊を始めるには様々な準備が必要になりますが、まず「物件が適法かどうか」を確認することが重要です。

用途地域が適法かどうか?

建築基準法や都市計画法で決められた用途地域のうち、簡易宿所営業が可能なのは、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域の6つになります。

民泊新法では、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域の住居専用地域でも可能になります。

特区民泊については、条例で決められている用途地域が対象となります。

また国家戦略特区となっている大田区など民泊に前向きな自治体もあれば、民泊営業のトラブルなどを警戒し、軽井沢市では民泊を禁止、台東区ではフロントの設置と営業従事者の常駐を義務化するなど独自の規制を行っています。

(軽井沢市HP、台東区HPより)

用途地域についても「特別用途地区」「地区計画」などで民泊に対する用途規制の例外を決めていきますが、緩和か規制強化かは自治体の姿勢次第です。

地域によって対応が分かれますので、空き家のある場所で民泊が可能かどうかは、自治体に確認することが必要です。

また農山漁村エリアの空き家を、相続などで所有することになったのであれば、農家民宿での活用も検討してみる価値はあります。

空き部屋(マンションなど)の場合の注意点

マンションの1室を民泊として活用する場合、マンションの管理規約に「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という条文がある場合、その部屋での民泊はできません。

管理規約の変更は可能ですが、分譲マンションの場合は、「区分所有者及び議決権の4分の3以上の多数による集会の決議」が区分所有法で決められており、ほぼ不可能です。

管理規約違反が無いことは、民泊新法でも条件の一つとなっており、今後も緩和されることはないはずです。

また既に販売時から管理規約の中に「民泊用途の禁止」を明言する新築マンションも出てきています。

不特定多数の民泊利用者が出入りすることで、セキュリティや資産価値の低下などが懸念され、民泊がマンション居住者の暮らしを脅かすイメージになっていることが伺えます。

民泊が法的に整備されたとしても、マンションの管理規約での規制がある限り、空き室での合法的な民泊営業は不可能です。

民泊営業を運用する手間

民泊営業を運用するには、仲介サービスへの登録、宣伝、予約管理、鍵の引き渡し、問合せ・クレーム対応、清掃、リネンや備品の交換補充など借家にするよりも多くの手間がかかります。

ただし立地がよく、宿泊の稼働率も高ければ、賃貸よりも多くのリターンが得られます。また撤退するのも簡単なので、よい借り手が見つかるまで、また自分が使うまでの「つなぎ」のビジネスとしても魅力です。

すでに民泊許可代行業者や運用代行業者なども出てきていますので、うまく活用すれば手間もかからず始められます。

一方で、Airbnbでは「レビュー」という利用者の評価で、粗悪なサービスが排除されていくことが想定されています。

一定のサービスレベルを維持していないとゲストからは見放され、収益が上がらなくなるビジネスモデルであることは、認識しておく必要があります。

まとめ

民泊という新しい形の宿泊サービスは、ホテルや旅館などの既得権益を持つ業界からの抵抗だけでなく、受け入れる日本社会の反発も大きいようです。

民泊新法も、地域ごとの事情を考慮し条例での規制は許容する方向ですので、法律としての定義はされても、実態として投資型の民泊は従来通りの規制と変わらない可能性もあります。

利益優先の投資型民泊が利用者や周辺住民にリスクを押し付けたまま拡大しないよう、一定の規制をかけ様子を見る行政の判断も理解できます。

一方で民泊新法によるホームステイ型の適法化で、本来の民泊が広がる可能性もあります。外国人旅行者にとっては、ホテルや旅館では味わえない人情的なホスピタリティや体験のユニークさは民泊ならでの魅力です。

日本の文化や習慣を、正確に知ってもらうにもホームステイ型は向いています。ビジネス的には成り立ちにくいかもしれませんが、「助け合い」や「おもてなし」の心を持つホームステイ型の民泊ホストが増えれば、マナーの悪い外国人旅行者も減り、ホテルや旅館ともサービス面で棲み分けもできるはずです。

新しいビジネスの形でもある民泊が日本にどのような形で根付くか、または全く拒否されてしまうかは政府の法整備やルール作りだけでなく、日本の社会に受け入れられるかどうかにかかっているともいえます。

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