コンパクトシティとは?富山・青森の事例からわかる失敗と成功例とメリットデメリット

行政や商業、学校、医療機関など様々な都市機能や住民の居住区を近接させて集約し、徒歩や公共交通機関のみで利用できるような街づくりを「コンパクトシティ」構想といいます。

人口密度の高い東京などの大都市部では実感はないかもしれませんが、人口減少や郊外化が進む地方都市では、中心市街地の空洞化や居住区の分散が起こり様々な問題が生じています。

国土交通省の後押しもあり一部の都市では先行して取り組みが行われていますが、コンパクトシティの実現には解決しなければならない課題も多く残されています。

なぜ今コンパクトシティが注目されているのか?これまでの取り組みも交えて解説します。

コンパクトシティの背景と歴史

都市が発展する場合、まず駅などを中心とした市街地へ人口が流入し、その後郊外に向かって拡大します。

人口集中により中心市街地の地価などの居住費用の高騰や、環境の悪化などの都市問題が発生します。

鉄道の延伸や自動車の普及などもあり、より良い居住環境を求めて市街地から郊外へと人口の流出が進む(ドーナツ化現象)が起こります。

日本でも高度成長期以降に郊外で宅地開発が進められ、それに続き周辺のロードサイドへの小売店や外食産業の立地が相次ぎました。さらに大型ショッピングセンターや大学や病院などの郊外への移転も行われました。

この過程の中で行政などの計画的な都市建設が無く、開発業者などによる無秩序な開発が行われると、郊外に虫食い状に宅地が点在するスプロール化が起こります。

スプロール化が起こると、画的な街路が形成されず道路、上下水道、学校や病院等のインフラの整備が立ち遅れて、広範囲にわたって都市機能が低下します。

それでも経済成長期には国や自治体によるインフラ整備も進みましたが、2000年代から急激に進む人口減少と高齢化により税収は減少し、公的インフラの老朽化の対応も必要になっています。

そのため国や自治体は行政サービスを従来のように、広範囲に提供していくことが困難になってきています。

このままでは市町村が破綻する可能性もあるため、持続可能な都市構造への再構築(リノベーション)を行う方策として考えられているのが「コンパクトシティ」です。

日本では2006年のまちづくり3法の改正(改正都市計画法、大規模小売店舗立地法(大店立地法)、中心市街地の活性化に関する法律(中心市街地活性化法))に、現在のコンパクトシティの概念が取り入れられたことで一般的になりました。

それ以前にも地域の実情や問題に合わせて、職住近接や都市観光を目指した中心市街地への集約や回帰の取り組みはありましたが、「コンパクトシティ」という言葉は比較的新しい言葉になります。

コンパクトシティが注目される理由

コンパクトシティが注目されてきたのには、ドーナツ化現象やスプロール化など都市にまつわる諸問題が解決でき、地方都市再生にもつなげられるメリットに期待が高まっているからです。

海外では、自動車依存のライフスタイルからの脱却によるCO2削減や、密集して居住することでエネルギーロスを減らすなど環境面でのメリットが注目されています。

環境問題は重要ですが、国内では少子高齢化などの人口問題への対応が喫緊の課題としてあります。

そのため日本版コンパクトシティは、環境問題以外にも以下のようなメリットや効果を期待されています。

・徒歩やバスなどで商店街や公共公益機関を利用できることで、高齢者による自動車事故の防止、買い物難民や孤立化の解消などが期待できます。

また、外出が促進されて健康増進につながる生活面での効果もあります。

・公的サービスが必要な面積が減り、道路、下水道、文教・医療施設などの維持更新費用の削減が期待できます。除雪や介護などの行政サービスの効率も上がるので財政面が健全化します。
・人が集まることにより、新たなコミュニティが生まれ中心市街地の活性化、経済的な成長維持や生産性の向上も期待できます。

特に地方では生産年齢人口の減少に伴って、地場産業の停滞や地域の活力低下が進むことで税収が減少し、財政を圧迫しています。

その一方で、老朽化した社会資本(道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、上下水道、都市公園、治水、海岸)の更新費用は年々積み上がり、国土交通省所管分だけの推計でも、2011年度から2060年度までの50年間に必要な「更新費」は約190兆円が必要とされています(2011年度国土交通白書)。

逼迫する地方都市の財政再建の切り札としても、大きな期待が高まっています。

コンパクトシティは郊外へ向かって膨張する都市構造から脱却し、中心市街地へ集約する大転換を行うことで、人口が減少しても都市機能や地域の活力が維持できることを最大の目的としています。

コンパクトシティのデメリットと懸念

コンパクトシティを実現する際には、中心市街地など集約する居住地域と、郊外や周辺農地など環境保全地域を区分けし、居住の制限を行うことが検討されています。

行政の施策により環境保全地域から居住地域への移住を推進するものですが、当然のことながらデメリットもあります。

・郊外に住む住民全てに中心部への移動を義務づけることはできないため、移住しない人へも出てきます。郊外では公共サービスが相対的に低下するため、生活環境が悪化するとともに、非移住の人への差別や偏見が生まれる可能性があります。
・中心市街地では人口が増え、交通渋滞、治安の悪化や騒音など住環境の悪化が再び生まれます。
・中心市街地と郊外の地価格差が大きくなり、郊外の居住者は個人の資産価値が目減りします。結果として中心市街地への移住ができなくなります。
・人口が集中することにより、津波、地震など防災面での対策が取りにくくなります。

こういったデメリットに対する懸念に対して、国交省では対策を取ることを検討しています。

出典:「平成27年3月 コンパクトシティの形成に向けて」国土交通省資料

国土交通省が提唱する「多極ネットワーク型コンパクトシティ」とは、中心市街地に一極集中する施策ではありません。

郊外エリアでも人口が集中しているエリアを中心に居住誘導区域として残し、公共公益機関、ビジネス街、商業地や一部の住宅は都市機能として中心市街地へ集約し、その間をLRT(路面電車)やバスなどの公共交通機関で結んで利便性を向上させるプランです。

コンパクトシティを目指す自治体に対し、国土交通省では交付金などの財政施策、都市部の医療福祉施設の建替え時の容積率などの規制緩和、公共交通への整備支援などを行う予定です。

また市町村の居住機能や福祉・医療・商業等の都市機能の立地、公共交通の充実に関する包括的なマスタープランを立地適正化計画とし、国交省の支援により2020年までに150市町村での作成を目指しています。

一定の成功を収めた富山市の事例

富山市は2010年をピークに人口が減少に転じ、高齢化も進む典型的な地方都市で、自動車保有率は全国2位という自動車依存の高い地域です。

住民の移動もマイカー前提のため、宅地は敷地の広い戸建てを中心に郊外へと広がっています。

居住地域の広域化によって、ゴミ収集や除雪などの行政サービスのコスト増大、高齢化による介護や医療サービスの質の低下などの問題が表面化しはじめ、解決策として10年ほど前からコンパクトシティへの取り組みを始めています。

富山市ではJR富山駅を中心とする市街地と、鉄道駅やバス停などを中心とする徒歩圏の拠点地域を「お団子」と呼び、「串」と呼ばれる公共交通でつなぐ計画です。

「串」を通すために、利用者の減少が顕著だったJR富山港線を富山ライトレール(愛称ポートラム)と呼ばれるLRT(次世代路面電車)へ再生しました。

バリアフリーの交通システムで使いやすいように運転間隔を短縮し、高齢者の料金も抑えたことで、利用も増えたようです。

平成21年には市内環状線が開業し、LRTや鉄道沿線から外れる地域には、接続が便利なバス路線の整備なども行っています。

公共交通沿線居住推進地区の「お団子」エリアには割安な市営住宅の建設や、居住支援の補助金などのインセンティブを与え居住推進を図っています。平成24年には、このエリアへが転入超過に転換しています。

中心市街地の活性化には、商業施設(FERIO総曲輪)と隣接した「グランドプラザ」を建設し、年間100回以上のイベントを開催、富山城址の南側には富山国際会議場も建設されています。

市街地へ行きやすくなったこともあり、民間の市街地再開発事業なども活発化しつつあります。

富山市の計画通り、高齢者の移住や移動の利便性は上がり一定の成功は収めていますが、市街地でも従来のアーケードや商店街へお客は戻っておらず、整備などの公共投資のため富山市の地方債発行額が増えるなど問題も出てきています。

また富山市に隣接する砺波市に「イオンモール砺波」、射水市に「コストコ射水」、小矢部市に「三井アウトレットパーク北陸小矢部」など大型商業施設が相次いで開業し、買い物の郊外化が懸念されるなど富山市単独での取り組みの難しさも表面化しています。

失敗といわれる青森市の事例

富山市と同様に青森市でも都市の郊外化が進み、中心市街地の空洞化や宅地の拡大により、特に除雪費用の増大などが問題になっていました。

平成 11 年策定のマスタープランにおいて「コンパクトシティの形成」を目標として、市街をインナー、周辺をミッド、郊外をアウターと3つのエリアに分け、エリアに合わせた土地利用の方針や交通体系の整備方針を定めて宅地の拡大を抑制する方策を取っています。

アウターエリアでは基本的に開発はできず、学術、芸術、文化活動やレクリエーションエリアとして維持しています。インナーエリアへの居住推進策としては、駅前再開発地区の一角にケア付きの高齢者対応マンションや市営住宅の建設、融雪道路や融雪歩道の整備などインナーエリアの居住環境の向上を図っています。

こうした施策によりアウターの居住者には、現在の土地や住居を売却しミッドやインナーに移住をしてもらう計画でしたが、アウターの土地価格が安すぎ買換えができない問題が生じています。

中心市街地の活性化策としては、2001年に第3セクター方式で地下1階、地上9階建てビル(「AUGA」アウガ)を185億円かけてオープンしています。

地下に生鮮市場、上層階に市の図書館、中間階に商業施設や公共施設が入居し、開業当初は年間600万人を集め中心市街地に賑わいが戻ってきたように見えました。

ところが、計画時に入居予定だった百貨店が入居前に撤退し図書館や公共施設などが入った経緯もあり、賃料が不足し開業から赤字が続いています。

2017年2月には、経営再建のためすべての商業施設を閉店し、替わりに市役所機能を一部移転することになっています。

当初はコンパクトシティの成功例として語られることが多かったアウガですが、経営不振から2015年には市長が退任するなど成功とは呼べない状況に陥っています。

ただ青森市の場合は2000年~2010年の青森市全体の人口減少率6.0%に対して、人口集中地区の減少率は4.8%にとどまっていて、居住エリアの集積という面では、ある程度成功しているともいえます。

ハコモノ優先の施策と非難が大きい「アウガ」ですが、そもそもの事業計画に無理があっただけでなく、2008年にはミッドエリアに「イオンタウン青森浜田」が開業するなど郊外エリアの商業施設の出店に歯止めがかけられず、コンパクトシティを謳う行政の権限にも限界があることが理解できます。

コンパクトシティの課題と今後

富山市、青森市の事例を見る限り、郊外化や市街地の空洞化が進んでしまった都市をコンパクトにしていくことは難しいことが分かります。

特に市街地や居住推進地域への集積が思うように進んでおらず、商業活動の活性化や財政支出の縮減といった効果までは得られていません。

コンパクトシティのメリットを享受しやすい高齢者は、世帯人口も少ないので移住もしやすいはずですが、やはり長年住み慣れた土地を離れることに抵抗感があり移住が進みません。

都市での生活利便性を求めて自発的な移住を行う高齢者に対しては、経済的なインセンティブだけでなく、新しい土地でのコミュニティに参加しやすくするなどのソフト面での施策が必要です。

また中心市街地の活性化では官民合同で商業施設を建設したことでお客は増えますが、従来の商店街が魅力を発揮できず、郊外の大型商業施設にお客を奪われるという従来からの構図は変わっていません。

地域の特色を生かしたイベントや、起業家に安く貸し出し特徴のある多彩な店舗を揃えるなど商店街自身での努力も必要です。

都市計画の成果は10年程度では測れないこともあり、実際にコンパクトシティへの取り組みで、先行した都市での投資対効果が高いかどうかは現状ではまだわかりません。

不幸にも震災などで既存の市街地を失った被災地では新しく市街地建設を行っており、先行してコンパクトシティのモデル的な街づくりが行われれば、その効果が正しいのかどうか判明する可能性もあります。

新しい概念のため、今後も様々な都市での成功や失敗が続く可能性があります。コンパクトシティの成功には行政の手腕も問われますが、住民がその目的を十分に理解し協力することも大事です。

まとめ

人口減少や高齢化により、日本の社会構造が大きく変化しています。都市のあり方も、成長期と同じままでは立ち行かなくなってくることは明白です。

実際に、2014年時点での日本創生会議・人口減少問題検討分科会の推計で869もの消滅可能性都市が国内にあり、大都市部においても少子高齢化の波を食い止めることはできなくなっている現状があります。

コンパクトシティは少子高齢化、人口減少に対する対症療法ではなく根治治療ともいえますが、人口減少そのものに歯止めをかける施策ではありません。

そもそも居住だけでなく、就労や就学など含めて生活の全てを内部で完結できる都市は限られています。

また高齢者の移動や介護、老朽インフラの維持メンテナンスなどについては、移住ではなくロボットや自動運転車などテクノロジーの活用で解決できる可能性もあります。

コンパクトシティだけが解決策ではなく、都市の特性に合った手法や施策の選択などが行われるのが正しい在り方と言えます。

国土交通省の方針もあり、お住まいの地域でもコンパクトシティへの取り組みが進められるかもしれません。

行政の方針や施策が正しいかどうかは判断しにくいと思いますが、ハコモノの建設だけでなく包括的で持続的な都市計画になっているかどうかは、住民として厳しくチェックする必要がありそうです。

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