こんな使い方も!?いろいろ使える空き家活用方法の事例

空き家問題の解決を目的として、空き家特別措置法(空き家法)が施行されました。

空き家法は、所有者の放置により倒壊の危険性があったり、近隣への迷惑の原因となっていたりする空き家を「特定空家等」として、行政による解体処分を可能にしています。

「特定空家等」を処分するだけでなく、「空き家の有効活用の推進」も空き家法のもう一つの目的です。

空き家にしないことで建物の急激な老朽化も防げ、人が住んだり集まったりすることで人口減少への歯止めや、市街地のにぎわい創出など副次的な効果もあります。

行政による空き家活用への助成などの支援策も増えてきていますので空き家にお困りのお方は、ご紹介する空き家の事例を参考にしてみてください。

過疎化、人口減少対策としての活用

少子化や都市部への人口流出などが進む地方では、人口減少が空き家問題の原因になっています。

都市部に移住した子供が生まれ育った実家を相続した場合、現在の居住地で自宅があるので実家には住みませんし、遠方であれば手入れも行き届かなくなります。

逆に言えば、「建物は古いが住むところはある、だけど住む人がいない」状態ですので、地方への移住促進策(特に若者)と空き家対策がセットで実施されています。

空き家バンク事業

「空き家バンク」は自治体が空き家所有者からの物件情報を集め、利用希望者にホームページなどで情報提供を行ってマッチングを行う事業です。

古い家屋が多く通常の不動産業者での仲介では「借り手」「買い手」が見つからない物件も多いため、空き家バンクを利用すると自治体からインセンティブが与えられる制度になっています。

人口減少対策も目的としているため、Uターン(生まれ故郷に戻る)Jターン(生まれ故郷の近隣へ戻る)Iターン(都市部などから移住する)、若者の移住へのインセンティブを手厚くしているのが特徴です。

石川県金沢市の空き家バンク事業

金沢市では、空洞化が進む「まちなか区域」を対象に、平成13年度から定住支援策を行っています。

空き家バンクの仕組み

自治体だけでなく、民間の不動産業者(宅建協会)や建築士会と協力しながら運営しているのが特徴です。

自治体は物件の情報提供と成約時の助成を行い、実際の取引やリフォームなどは民間業者が実施します。

空き家バンクの対象物件

①  空き地 ②  空き家 ③  空き住戸 町屋
対象区域 まちなか区域 まちなか区域郊外(市街化区域) まちなか区域郊外(市街化区域) 市内全域
対象物件

 

500㎡未満 昭和26年以降建築 昭和56年6月1日以降に確認済証が交付されたもの住戸面積50㎡以上 昭和25年以前建築
対象行為 売買・賃貸 売買・賃貸 売買・賃貸 売買・賃貸
補助金制度

[①②③は、かなざわ空き家活用バンクに、掲載されることが条件

売買物件はまちなか空き地活用促進奨励金の対象

 

売買物件はまちなか空き家活用促進補助金・郊外部移住者空き家活用促進補助金の対象

 

売買物件はまちなか中古分譲マンション改修費補助金・郊外部移住者中古分譲マンション改修費補助金の対象 条件に適合する場合は金澤町家再生活用事業の対象

民間との不動産情報サービスとの差別化として、空き家バンク登録物件には成約時に行政の助成が行われます。

空き地 ・街中の4m未満の狭あい道路に接する500㎡未満の低未利用地を2区画以上の戸建て住宅地として整備する場合に道路拡幅整備費や老朽建物除去費を助成

・上記制度の整備事業に土地を提供した売主に、譲渡所得金額相当額の3%(30万円)を助成

空き家 空き家の買主で自ら定住するものに対して、住戸内部の改修工事費を助成(工事費の1/2 限度額50万円)
空き住戸 空き住戸の買主で自ら定住するものに対して、住戸内部の改修工事費を助成(工事費の1/2 限度額25万円)
町屋 景観条例指定区域内の町屋を対象に、内外装の修繕や耐震補強工事の費用を半額助成

空き家、空き住戸の助成は定住する移住者に、インセンティブが加算される制度になっています。

空き家の場合、45歳未満の買主には内部改修費の1/2(限度額50万)、UIJターン世帯には内部改修費の1/2(限度額50万)となります(加算の合計限度額は50万円)。

空き住戸(マンション)の場合は限度額、加算の合計金額も25万円となります。

こういった、空き家のマッチング事業や移住者へのインセンティブは他の多くの地方でも行われています。

その他の空き家バンク事業でのインセンティブの例

市町村 インセンティブの例
佐賀県武雄市 市とNPO法人、業者が連携する空き家バンクを利用して成約した場合、買主に対し補助金を給付しています
島根県飯南町 町内に不動産業者が無く、空き家バンクの運営と移住者に対する無料職業紹介を行っています
茨城県北部地域 空き家提供者に対し、遠方に住む家主の交通費、部屋の掃除や改修など貸し出しに関わる諸経費を助成。

空き家バンクを運用していない自治体でも、市町村の条件に合った空き家に対する改修費や家賃の補助がある場合もあります。

空き家に農地を付け農業従事者を募集するケースや、空き家を活用した高齢者や子育て世代の住み替え支援制度など、自治体の事情に即したさまざまな施策が行われています。

空き家の短期滞在制度

富山県珠洲市では移住、定住を希望する人向けに空き家短期滞在(ちょい住み)制度を準備しています。

利用希望者と空き家の定期借家契約を結び、11日間まで15,000円(最長93日間)の安い家賃で提供しています。

田舎の生活にあこがれを持って移住しても、あこがれだけでは長続きしない場合もあります。

短期間生活してみて自らの目で気にあるところを事前に確認することができ、後悔しない移住・定住を支援する制度です。

移住体験制度のほかにも、空き家の見学会や移住者のためのセミナー、移住後の就業支援制度など空き家に住む人の生活サポートも含めた支援策を実施している自治体も多数あります。

行政による空き家の公営住宅化

島根県奥出雲町では町が空き家を借上げ、改修を実施しUIターン移住者用の公営住宅として活用しています。

島根県奥出雲町(10軒すべて入居中)

また、国土交通省では2017年度中に法整備をおこない、空き家を公営住宅の保管と位置付けて、低所得の高齢者や子育て世帯に広く提供する仕組みを創設する方針を決めています。

入居者への家賃補助や家賃上限額の設定、所有者に対する空き家改修費の支援なども行う予定です。

この制度が確立すれば、地方だけでなく都市部の空き家の活用の幅が広がっていくことが期待できます。

コミュニティスペースとしての活用

都市部の東京都世田谷区でも空き家は56,000戸ほどあり、ゴミ屋敷化や景観の悪化などの問題が発生していました。

世田谷区では平成25年度から「空き家等地域貢献活用モデル事業」を始めています。

所有者や地域活動団体が主体となって、空き家などを地域貢献活用に利用する企画を募集し、モデル候補として選ばれると最大 200 万円の助成を受けられます。

助成金は、初期整備費用として、改修工事費、備品購入等に使うことができます。

シェア奥沢HPより

もともとは昭和初期に建てられた築80年の住宅でしたが、長期間使用されておらず物置となっていました。

持ち主の地域貢献への利用希望もあり耐震工事と一部の改装を実施し、コワーキングスペース、シェアキッチン、工房、音楽会など、様々な形で地域の人たちに活用されています。

利用制限の多い公共施設にはない使い勝手の良さや、オシャレな雰囲気を活かし地域コミュニティのハブとして交流が広がりつつあります。

公共のスペースとして使うのは、建物として適法なものでなければなりません。

世田谷区の事業でも、耐震や接道などで既存不適格(現行の建築基準法では違法になる建物)の空き家で使用できないケースがあります。

シェア奥沢の場合も世田谷区の助成を受け、耐震工事を行っていますが、老朽化した家屋の大半は費用を掛け、対策する必要があることがネックになります。

社会貢献の意義があったとしても、補助金とコミュニティスペースとしての費用対効果については行政による慎重な判断が必要になります。

NPOなどの地域活動団体が空き家を借りて事業をしようとしても、家賃面で折り合わないケースもあります。

世田谷区は家賃水準が高いエリアでもあり、地域貢献とはいえそれなりの家賃が必要になり計画段階で断念するケースもあるようです。

コミュニティスペースは都市部の空き家活用としては有効ですが、維持費も含めた費用面での調整が難しいようです。

宿泊施設として活用

普通の住宅を宿泊施設として観光客に提供する「民泊」が注目を浴びています。民泊の大手サイト「Airbnb」でも東京都内で1,000件ほど物件が登録されています。

ただし、空き家を宿泊施設として使用するには「旅館業法」という法律があり、防災や衛生面での基準をクリアし、都道府県知事の許可を得る必要があります。

空き家を宿泊施設に改修するには少なくないコストと、煩雑な手続きを行わなければなりません。

政府も「空き家問題」と東京オリンピックに向けた外国人観光客の宿泊施設不足の問題の解決策として民泊には期待しています。

東京圏、大阪圏、愛知県、福岡県といった「国家戦略特区」のエリアにある一部の空き家に関しては、「旅館業法」の例外として観光客に貸し出すことが認められてきています。

民泊は、観光客が多い都市部や観光地に限られると思ってしまいますが、農村で余暇を楽しむ「グリーンツーリズム」を背景に、地方での空き家の需要もあるようです。

茨城県常陸太田市では空き家を貸し別荘型の農家民宿(簡易宿所)として再生し成功しています。

里美 古民家の宿「荒蒔邸」

「荒蒔邸」は任意団体が運営し、常陸太田市(旧里美村)からの行政補助を受け開業しています。旧市街地の立地で80坪の平屋建て、囲炉裏端やかまどのある昔ながらの日本家屋です。

食事提供はありませんが蕎麦打ちや餅つき体験などのアクティビティも用意され、田舎暮らしが満喫できます。

会員制で会費は年間10,000円で一泊1名3,000円、1日1組限定で4名からの利用になります。

当初はカラオケなどの持ち込みもあり、近隣住民からの苦情もあったようですが、会員制として主旨を理解した人のみの利用に限定したことで解決しています。

それでも年間300~400人ほどの利用があり人気の施設になっています。

店舗としての活用

兵庫県神河町では、空き家バンクと補助金制度を活用して空き家を店舗(兼住宅)に改修する事業が行われています。

かみかわ銀の馬車道 神河町空き家プロジェクトパンフレットより

うどんや蕎麦、ピザ、パン工房、マッサージ店などバラエティに富んでいます。人口1万人程度の町ですが、店舗の改装費の補助だけでなく移住者の悩みを聞く相談員の配置などが功を奏しているようです。

空き家の店舗利用は、居住やビジネスなどに向かない条件の悪い物件でもマーケティングやコンセプトを工夫して「隠れ家的お店」として成功する例もあります。

地理的条件に左右されにくいWEB制作やシステム開発などのIT事業所の開設や、ネット店舗運営事業者などが空き家を活用する際に助成を行っている自治体もあります。

立地の良い古民家などは、自治体や観光振興団体などが借上げ土産物店やレストランなどに転用するケースもあります。

地方では「空き家問題」だけでなく、商店街などの「空き店舗」も問題になって、空き店舗の自治体での対策は、住宅関連の予算ではなく産業振興の予算で補助金が運営されているケースが多いようです。

空き家で何かビジネスを始めたいと考えている方は、自治体の住宅関係の部署だけでなく産業振興の部署や商工会議所などに相談するとよいようです。

介護施設としての活用

高齢化社会が進むにつれ、介護施設の不足も問題になっています。

2016年1月に政府は、空き家を在宅介護対応住宅へ転用し、介護する家族と長期間同居できるようにすることや、家族が介護に対応できない際の短期間の宿泊施設としての利用することなどの事業を進めることを発表しています。

要介護者を24時間見守れるようICT(情報通信技術)を使った高度医療システムの導入もすすめる方針です。

平成28年度の補正予算からの実施予定ですが、すでに一部の自治体では空き家を「グループハウス」や「デイサービス」へ転用する事業者に対し補助を行っています。

建築基準法への適合、バリアフリー改修、火災報知器やスプリンクラーの設置などの工事費用に対する助成で、運営費については事業者負担となります。

介護施設と同様に、保育施設などでも活用が進みそうです。東京都では待機児童解消のため、空き家を利用した保育施設の事業者に対し補助金を助成する事業を開始しています。

施設の要件が高くなるため空き家の活用事例としては少ないのですが、今後活用が期待される分野です。

文化施設としての活用

大阪府吹田市では、古民家を文化施設として観光や交流の場に役立てています。

吹田歴史まちづくりセンター「浜屋敷」

平成12年に所有者から歴史的古民家(江戸末期に建てられた庄屋屋敷)の寄付を受けて、NPO法人吹田歴史文化まちづくり協会が運営しています。

古民家の再生にあたっては、地域の市民や団体、歴史文化活動団体や商業団体等が参加する研究会や委員会により活用構想や管理運営などを検討しています。

三重県伊勢市では江戸時代の酒問屋の保存を、市とNPO法人が主体となって行っています

伊勢河崎商人館

観光施設としての活用だけでなく、近隣にある空き家、空き蔵の所有者と商業施設、飲食施設等の開業希望者とのマッチングも行っており、実際の契約にもつながっているようです。

観光資源としての活用が無理でも、古民家はヒノキなどの良質な木材で作られていることも多く、移築して店舗や住居に使用するニーズもあります。

移築する際に補修や耐震補強、リフォームも行い、レトロモダンな住宅として再生するので人気が出てきています。

新築住居にあえて古材を使うケースもあるので、古い木造住宅を解体する場合は古民家の再生業者や、古材の買い取り業者などに確認した方が良いでしょう。

まとめ

いろいろな活用事例や取り組みを見てきましたが、「空き家問題」の解決には行政の積極的な支援が不可欠です。

空き家の利用者に対する助成などの経済的な支援策が実施される一方で、法規制によって所有者の多様な活用方法が制限されているも事実です。

建築基準法に基づく耐震性の確保など安全に関する部分については仕方のない部分もありますが、規制緩和や柔軟な対応などを進めていかないと、先進的な事例も継続できず一発花火で終わってしまう可能性もあります。

所有者、借主や事業者、施設の利用者など空き家に関わる人のメリットデメリットのバランスを取る施策が必要になっています

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